咀嚼をとおしての健康について
歯の役目は、口から栄養を摂る器官というだけでなく、食べ物を味わって楽しむという器官でもあります。甘味・辛味・苦味・渋み・酸味等、調理された食べ物の味覚のハーモニーはまさに、料理した人のマジックと言えるかもしれません。
それを正確に感じとる事ができるのは、歯に限らず、舌・口腔粘膜・唾液・口腔周囲の筋肉など、すべての機能が健康である事が条件となります。
日本には四季があり、それぞれの季節の食材が出てくるため、日本人の味覚は、とても繊細になりました。「竹の子」や「きゅうり」の歯切れ音、「タコ」や「イカ」の歯ごたえ、「豆腐」の柔らかい舌触り、日本の料理は、口腔内の感覚だけでなく、食べ物の色彩や、形、触覚、香り、音のようなものまで、味覚の一部と取り込んできたのです。
さらに、現代に至っては、中華料理、フランス料理、イタリア料理など、世界中の料理が、日本中どこにいても食べることが可能となりました。ただ、この幸せを得ることができるのは、当然ながらしっかりと咀嚼できる人、口腔内が健康な人に限られるのです。それを考えると、歯科医師としての責任の重さに身がつぶれるような思いにもなります。
ここで咀嚼の効果について、振り返ってみたいと思います。
①食べ物を味わう事により、心理的満足感、ストレス解消、情緒的豊かさを感じる
②咀嚼の刺激により、唾液や胃液の分泌を促進し、消化吸収を助ける
③よく咀嚼することにより、血液中の血糖値の高まるタイムラグを取り、満腹中枢を刺激し、過食、肥満、あるいは、糖尿病を予防する
④咀嚼運動が脳内血流を刺激し、アルツハイマー病の予防にもなることも最近の研究で分かってきました。
かように咀嚼というものは、健康に大きく関連しているのです。
ところで、このブログを読んでいただいている皆様は、「フレッチャリズム」という言葉をご存知でしょうか?大正時代の話にはなりますが、アメリカの大富豪であったホーレンス・フレッチャー氏が健康のために考えた痩身法が、良く咀嚼するという事だそうです。といっても、フレッチャー氏の友人の歯科医師からアドバイスを受けたようで、1回食べ物を口に運ぶたびに、30回咀嚼するといった健康法です。その結果130kg近くあった体重がみるみるうちに半分近くまで減って、見事な健康体になった、という記録が残っています。
これを受けて、日本でも昭和初期に「咀嚼教練」といった、給食の時間に正しい咀嚼の方法を教える時間があったという事です。
正しい咀嚼を行う事で、患者様の健康づくりに寄与する啓蒙活動をパール歯科医院では行っています。
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